骨粗鬆症
はじめに
当クリニックでは骨粗鬆症を疑われる患者様に、病気や身体状況なども考慮した上で薬を選択し治療を行っています。
健康診断で骨粗鬆症を指摘された方をはじめ、腰椎の圧迫骨折や大腿骨近位部骨折などを罹患された方、リウマチや膠原病でステロイド治療をしている方も来院されています。最近では高血圧や糖尿病などの生活習慣病も骨粗鬆症の原因になることが分かってきています。骨粗鬆症についての研究はここ数年でかなり進み治療薬も増えています。まずは治療薬を選択し、定期的な検査で効果を判断しながら治療を継続することが大切です。
骨粗鬆症とは
例えば、野菜やケーキ等で大きな気泡が入ることを「“す”が入る」と言いますが、この“す”が、漢字で書くと“鬆”つまり骨粗鬆症の鬆(しょう)は、鬆(す)とも読みます。あの状態が、骨の中におきるのが骨粗鬆症のイメージです。また、骨も日々新しいものに入れ替わっています。といっても、一気に入れ替わるものではなく、1年間に骨全体の約20~30%という、ゆっくりとしたスピードです。ゆっくりでも、新しく入れ替わるからこそ、骨折してもきちんと元に戻るというわけです。また、骨の入れ替わりには、2つの機能がかかわっています。
骨の2つの機能、骨形成と骨吸収とは?
骨には、破骨細胞という「骨の解体工事」をする細胞がいます。この破骨細胞が古い骨を解体し、解体したカルシウムが血液中に吸収されていくことを骨吸収といいます。反対に、「骨吸収」によって解体された骨を再生させる機能これを骨形成といいます。新しい骨を作る骨芽細胞、この骨芽細胞が新しい骨を作る「骨形成」をおこないます。単純にいいますと「骨吸収」と「骨形成」を常に繰り返し、骨をキープしています。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症を大きく分けると
1)原発性骨粗鬆症と
2)続発性骨粗鬆症に分けられます。
1)原発性骨粗鬆症とは、主に加齢が原因で起こる骨粗鬆症です。女性の場合は閉経によって、女性ホルモンが低下する為、骨粗鬆症が進行する事が多いです。思春期の過剰なダイエットなども関係することがあります。男性でもアルコールを沢山飲まれてきた方や、若い時に食生活が乱れていた方は注意が必要です。
2)続発性骨粗鬆症とは、原因となる疾患があり、骨粗鬆症が生じる場合に診断されます。原因として多いのは、リウマチや膠原病、ステロイド薬の長期使用、糖尿病や脂質異常症、慢性肺疾患、慢性腎疾患などです。
骨密度で骨の本当の強さはわかりません
骨を鉄筋コンクリートに例えると、鉄筋の部分がコラーゲンコンクリートの部分がカルシウムになります。骨密度は単純にカルシウムの沈着量を測りますのでコンクリートの部分のみを測定します。
骨質を左右する大切な要素は鉄筋の部分であるコラーゲンです。
骨粗鬆症の3つの検査
- レントゲン検査(胸腰椎2方向撮影)
- 骨密度検査(前腕DXA)
- 血液検査(骨代謝マーカー検査を含みます)
骨粗鬆症によっておこる年齢別骨折の種類
骨粗鬆症に伴う骨折部位は年齢別に特徴があります。
☆ 50歳から60歳では手首(橈骨)と背骨(胸腰椎)の骨折が多い統計があります。
☆ 年齢が上がると、転倒したときに手が出せないことがあり、お尻から床に着くため、足の付け根の骨折、大腿骨近位部骨折が起こり易くなります。
骨粗鬆症の予後
大腿骨近位部骨折は骨折すると特に治りにくく、歩行ができなくなったり動けなくなることで、認知症を生じることもあると言われています。寝たきりになると多額の医療費がかかりますので、社会全体にとっても解決すべき大きな課題となっています。
6~7倍の医療費がかかる!
骨粗鬆症の治療
自分の足で自立した生活をしていくために骨折しない為のケアがポイントになります。
- 筋力トレーニング
- 規則正しい食生活
- 骨のケア
つまり治療には食事・運動・薬が3原則です。
- 運動は筋力をアップさせて転倒を予防すること、骨に負荷をかけて強くすることを目的に行います。病態に個人差がありますので、身体状況を十分に評価した上で無理なく行いましょう。
- 食事は栄養バランスの良いもので、塩分や脂肪分の多い物は控えましょう。
カルシウムだけでなくビタミンDやビタミンKを一緒に摂取することをおすすめします。
- 薬による治療は骨粗鬆症外来での検査結果をもとに、病気や身体状況を考慮して選択していきます。骨粗鬆症治療薬の分類としては、「骨吸収抑制薬」と「骨形成促進薬」に分けられ、その他に骨密度を上げるために補助的に併用するものも出てきております。薬の効果には個人差があり、副作用がでることもありので、定期的な検査を行いながら続けていくことが必要です。
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症に関する質問
1. 骨粗鬆症は、どんな症状がでますか?
骨粗鬆症だけでは症状はほとんどありません。
骨粗鬆症が進行すると、骨折をするリスクが上がります。
特に転倒した際に、手首や背骨、足の付け根などに骨折することが多くなります。
2. 何歳くらいから治療を始めるとよいですか?
女性の場合、閉経を機に骨密度が低下しますので、40歳を過ぎたら1度は骨密度検査を受け、50歳を過ぎたら1年に1度は骨密度検査を受けることをお勧めします。
3. 市販のカルシウム剤は効果がありますか?
骨はカルシウムを材料にして造られますので大切ですが、摂取しただけでは効果はほとんど期待できません。カルシウムの吸収を助けるビタミンDを摂取することや、さらには吸収したカルシウムを骨に吸着させて骨を造り保つことで初めて骨を強くすると言えるでしょう。
4. 痛みがなくても治療は続けるべきですか?
そもそも骨粗鬆症だけではほとんど痛みはありません。
骨粗鬆症が原因で骨折をすることで痛みが出現します。
骨折の治療をして改善すれば、痛みは減ってきますが、骨粗鬆症が改善しているわけではないので次に骨折を起こす可能性は1度目より高くなります。
ですから、1度骨折をした方は治療を継続することが大切です。
5. 骨粗鬆症は予防できますか?
骨は20歳頃まで骨密度のピークを迎えます。
まずは成長期にバランスの取れた食事をし、日光を浴びて運動をすることが大切です。
歳をとってからの予防も食事と運動が大切ですが、特に高血圧や糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓疾患、慢性肺疾患などのある方は骨粗鬆症を悪化させることが分かってきていますので、アルコールやタバコなども控えることが大切です。